立食形式の飲み会で出会った彼女は、やせていて、背が高くて、顔立ちが整っていて、少し声が大きかった。私はあまり面識がなかったが、彼女は私をおぼえているようだった。彼女は少し酔っていた。私も少し酔っていた。
らくだ色のワンピースを着た彼女は、白い陶器のような腕を私に見せて笑いかけた。肘から手首にかけて、白い肌に何本も、桃色の横線があった。私は「すごいね」と言って、自分の左腕を見せた、私の左腕には昔入れた白粉彫りがあって、お酒を飲むとそれが浮かび上がる。
彼女は、目の前にいるメガネをかけた黒髪の女と、その腕にある十字架と龍の模様がうまく頭の中でつながらないようだった。微笑んだ彼女は、自分の腕の傷の説明をはじめた。
彼女はやせていて、背が高くて、顔立ちが整っていて、少し声が大きかった。
人形が作られていく様を、早巻き戻しで見ながら、高円寺や鷺宮のような、うっそうとした林のある、高い壁の裏路地を自転車で駆ける夢、その夢から、ひどい汗で体を濡らして、私は目覚めた。
シーツの端を噛みながら、ベッドにしがみついて耐えた。キッチンで文子が煙草を吸っていた、あんなに昔は、私が煙草を吸うのを嫌がっていたというのに、人は変わるものだ。まばたきをする、換気扇の音が呼び声に聞こえる。私は笑った、低い声で笑った。私の顔を覗き込んで、文子が「だいじょうぶ?」と言った、何度も何度も「だいじょうぶ?」と言った。私は目をつぶって「だいじょうぶ」と言った。筋肉が弛緩する、緊張する、私がこうなると文子は必ずゴミ袋の整理をはじめる、何度も何度もガラスを割るようなゴミ袋の音がする、あれはきっと私を捨てるための準備で、私はきっと捨てられてしまうんだと思う。すると途端に心淋しくなって、私は目を開ける、文子は私のとなりにいて、本を読んでいる。
私が「ただいま」と言うと、文子は不思議そうな顔をして、微笑んだ。
シーツには噛んだ痕がない。私はもう、どこへも行かない。
もういいです。ぷんぷん。
えーと、さっきまで、私の男性の趣味を延々書いたり、テレビの特撮番組がつまらないという話を愚痴っていたのですが、どうも気色悪いので全部消しました。暑い、じんわりと皮膚の表面に汗がにじんで、さわるとしっとり、土気色。
エアコンが壊れたのです。でも、なんだか体の調子が悪いので、漫画喫茶や映画館に行く気力がわきません。それで、自分に喝を入れようと、カマドウマの画像を色々見たのですが、これがまったく気持ち悪くない、肘のあたりが痒くなるような、いやな感じがしないのです。これはつまり、カマドウマの一番いやなところが、あの長い触角がゆらゆらとゆれるところであって、体の節や長い手足も、動かなければどうという事はないのだ、という事なのですね。そういえばかぶとむしの腹も、伸びたり縮んだりする様は非常になんというか
ちいとも涼しくならんので、都市伝説のサイトでも読んで寝ます。
「青い春」を観ました。
感想の前に、私の映画の観方についてお話します。
特撮映画を好きな人は、映画を観ている時に、物語を読む「物語脳」と特撮を見る「特撮脳」を同時に働かせます。だから、博士の台詞に感動しながら「あ、合成ライン見えた」なんて思ったりしても、全然冷めないで泣いたりできるのです。むしろ特撮技術の水準が高い時など、技術力に感動しているのか、役者の演技か、物語で泣いているのか、わからなくなったりするくらいです。他のジャンルでも、例えばサスペンス好きな人は、推理しながら感動するわけで、脳が分かれるのは、映画好き共通の病気かもしれません。 別脳を働かせると、大概の作品は愛せます。時々暴走して、深読みが妄想になる時もありますが、それでも、原作と違うとか、声の大きな人の雑言に、惑わされないで感動できるので、お得です。
そして、そういうお得な別脳を、ぐちゃぐちゃにしてしまう圧倒的な力を持った作品が、私は、大好きです。
「青い春」は、私を、高校三年生の男子高校生に変身させ、永遠とも一瞬ともとれる季節へと、連れていって、くれました。
これからパンフレットを読みます、うらやましいでしょう。もう観たよ、って人は一緒に読みましょう。観てないって人は、布団を噛んで寝てなさい。
今日は映画「青い春」を観に行きます、実はこの映画、私の知り合いが出ているのです、もちろん端役ですし、出ていなくても観に行くのですが、なんとなく自慢してみたくなったのです。 あ、そうそう「スターウォーズEP2」を観ました。映画学生のように「象徴」と「暗喩」をちりばめるルーカス節は相変わらずです、大好き。
まあ色々と文句のある人も多いみたいですけど、私は、ヨーダ師父が素晴らしいワイヤーアクションを見せてくれたので、前半の「アハハ…つかまえてごらん」「こいつぅ、まてー」「アハハ…」アナキンロデオ落馬(馬?豚?)心配するアミダラ、ひっくり返って笑うアナキン「もう!だましたわね!」笑顔で怒るアミダラ、抱き合う二人、急接近、沈黙。なんつう伝統芸も気になりませんでした。
目の前のカップルにお茶かけてやろうとかは、思いませんでしたよ。
スターウォーズよくわかんないや、って人は、ここを読むとよくわかった気がします。もうなんかね、わからないで「つまらない」って思うのは勿体無いから。
2002/7/30
ちょっと、旅に出てました。更新してなくて、みてくれてた人、ごめんなさい、ありがとう。紙ねんど人形はもうすこしでできあがります。お楽しみに。
ええと、旅行中に観た映画が「MIB2」と「タイムマシン」だった、というのが、如何に私が今、現実逃避に夢中か、という、いやな指標になるわけですけれども。どちらも面白かったですよ、後味はさっぱりしすぎですが、良くできてると思います。SF風味が苦手な人には、薦めません。特に、「タイムマシン」は、私のSF苦手友人二人が「つまらない」の判を押していますので、あまりSF映画を観た事のない人や、知識のない人は観ない方が良いでしょうね。
難しいことを難しく書くのは、難しい事だと思います。世の中の大半の人は、簡単な事を簡単に書いてる、と思うし。私は「わかんなーい」って言う子より「○○がね、△△なんだよ」って説明したがる子の方が好き。
あ、いや、子供は全般的に苦手だ。
2002/7/9
昔のことを思い出して、ああ、あの時私は、優しくする事ができなかったなあ、もう少しなんとかしてあげられたなあ、私はあの人の時間を無駄にしてしまった、何も与えてあげられなかった、などと、もう孵らない卵を温めて腐っちゃったみたいな毎日、暑くて嫌になりますね。どうにかならないものかしら。
どうにもならんので今私は人形教室に通っております、まあハイソ。といっても私の中学時代の友人が、近所の奥様相手にやっているカルチャスクールなので、ちっとも怖くなんかありません。紙ねんど相手に毎日格闘中です。